追及する学者(ついきゅうするがくしゃ)

追及する学者の物語(視点 ニャンダー)

学者としての道を選んだワタクシは
研究に没頭する生涯を受け入れ 歩んできました
幾度と発見と調査を繰り返し 気づきについて記述として残してきました
そして突破できない
ただ一つの謎が何千年もの間 ワタクシを苦しめ続けました
「この惑星の生物が星の導きを受けるメカニズムとはいかに?」
これについて 突き詰めれば
謎は一つどころではなくなっていきました
疑問というものは時に 分化し 解くことで新発見があるものですが…
なぜ星の欠片は我々を呼ぶのか?
どうやって生物達を選択しているのか?
どうして再び誕生し死ななければならないのか?
これら複数の疑問符が取り去られなければ
ワタクシの人生には何も与えられないのであろうと思っていました
しかしワタクシには夢もありました
この問題を解決した暁には
ワタクシの堅苦しく話をするこの
ちっぽけな悩みを 気兼ねもなく 自然と打ち明けられる
ほんの少しの特別な存在を 得たいとそう思っていました
ワタクシは自身のことを
町外れの小さな研究所に 出入りする学者
天体遺伝子学を研究する
星唯一の存在であると 認識しておりますが
本質を探ると言う意味では
この広大な宇宙においては どうやら未だ にわかには信じがたいらしい
生きる惑星である この ワンダストーン星専属の
心理学者であるか
ともすればよもやまさか
ワタクシは星をまるで 我が子のようにすら思いながら 調子を見守る
この星に唯一存在する 世話焼きのようなものであると 思っておりました
 
最近はワンダストーンの体において 何か他の惑星より不時着した病原体や
地質・水質における性質不和といった
大きく体調のすぐれぬこともなく 平穏な日々が続いています
じつはワタクシは この星の優れぬところへ気づくと
同じように体調を崩す節があることへと気がつき
最近はそうしたことも そうないので 有り難いことです
この研究室の扉を叩き 訪れるものはと言えば
新聞屋か宗教の勧誘かといったところではありましたが 
その日訪れたのは なんとも稀な方でした
物であふれかえる無機質なワタクシの研究所において
似つかわしくないと申しますか
その出来事は とても唐突で それが一体なんであるかとは上手く形容がしがたく
その扉の開くのを認めれば 冷めた部屋の中
温かな風を運ぶような方と申しますか
とにかくワタクシにはそれは
ああこうしたこととは 今後 最初で最後のことであり
ワタクシのよく知るこの星が
おそらく その方をここへ 導いたんでしょう と
説明をすることにしました
お迎えし 話をすればこれから地球という惑星へと
旅立ってく方であるとのことでした
興味深く 改めてワタクシは
ワタクシの研究事項について ざっと1時間ほど
お話をしましたところ その方は瞳の形を半円のようにし
表情を歪めながら 困ったように述べられました
物知りな学者さんなら もしかしたら 知っているのでしょうか
もし知っているならば どうか 教えて下さい
ワンダストーン星 この星において
どうして死は恐れられるのでしょう?
この時ワタクシは
ずっとこの日を待っていたのではないかと はっきりと思ったのです
それはまさしく現時点において研究途中にある死についての問いでした
間違えをお伝えするわけにはいかないでしょう
そのように感じながら 少々戸惑いもしましたが
ワタクシはワタクシの答えをつらつらと述べました
研究によるところ 消失とは一度きりの経験でしょう
一度きりを経験する人物が消失してしまうため
残る存在において死とは 実態の伴わない事柄に他ならないのです
消失の過程について追うことはできその研究は進んでいますが
実際の なぜ においては 解析不可能ですから
やはり 恐れられるのは 仕方のないことなのでしょう
このように急いて伝わるものなのでしょうか と
少々いぶかしく思いつつ ふとその方を見つめてみると
その方は 疑問に紐づく心配ごとがあったのでしょうか
よく通る声で その続きを述べました
熱心な学者さんだから お話ができそうです
では 今度はあなたへと お聞きしたいです
あなたは 怖いと思いますか?
今 死がここに訪れたとしたならば…
ワタクシは見透かされたのではないかとすら思いました
問いがこうも予測の中にある瞬間を目の当たりとすれば
その方との強烈な 引力のようなものを感じずにはいられませんでした
ワタクシは研究の最中に多くの疑問とそれにおける回答を準備し続けてきたのです
そして確信に近いところに存在していた
その答えを やはり予め 準備していたのでしょう
まるで呪文を唱えるかのようにすらすらと台詞を言いました
〇〇 〇 〇 〇〇
稀有な生涯をお持ちの方を
大いに歓迎し もてなすでしょう
ワタクシはこの星に定められた規則
死についてを 正しく理解する者として 
研究所をお借りています
それの答えを知らずして
生涯 他に何かを得られるとは信じがたいものです
〇〇 〇 〇 〇〇
真っすぐにその方を見てお伝えをすると
驚くことにその方は 悲しんだのです
ワタクシを見て 涙を流し始めたのです
知識を得ることへ熱心にある あなたを
これから必要としている
ワタシを 許してくださるでしょうか
もしあなたが さらに死をより深く知りたいというならば
星の導きの果て この星より消失するくワタシは
あなたの友としてありたいのです
ワタクシは首をかしげました
そしてその方をじっと眺めてみました
この時のワタクシにおいて  死については特に驚くことではなかったのです
この研究所には 導きによる消失者のデーターと
実例の資料が数多保管され 受け継がれてきていたからです
では トモとは?
それはどういった形をしたもので どう答えればよいものであるか
研究に明け暮れたワタクシにおいては 理解に乏しくありました
だからこそ
大変興味を持ったのです
その方の瞳は 乾いた涙を含み 光り輝いていて
声は一定の規則を続け 穏やかでした
その言葉が引き金とし そのときワタクシが宙に浮くような心地がしたのは
生まれたころ 規則に応じるよりか以前に得ていた
心地の良い浮遊感のことで あったのかもしれません
トモ を知るよりか早く研究の道を知った
ワタクシは この星を見守る学者として
また一個人的な感情から
その方を知りたいと思ったのでしょう
どうすればトモとなれますか?
聞くと今度はほんの少し口角をあげてワタクシの顔を認めました
〇〇 〇 〇 〇〇
では この瞬間から最後まで
それでいかがでしょうか
学者さんはワタシの 友達です
互いを尊重し長くそばにあることを
約束してくれますか?
ワタシの名前はエイリーです
〇〇 〇 〇 〇〇
「あなたにとって生きるということは
死について説明をすることなのですね」
どうかワタシの言葉を
忘れないで下さい 
そしてまだ ワタシには これから行うことがあります
新しい惑星で 今度は
友達として 再び出会いましょう
来る時も風 そして去る時もまた風のように
その方は ワタクシのもとを去って行きました
だんだんと我に返り どういった心地であるかを題材とし何かに書き綴ろうかと
そう思い立つと 理にかなうことを尊ぶワタクシには
なんとも似つかわしくないというのでしょうか 詩的で
無機質な部屋には 今にもひびが入り
割れてしまいそうなワタクシが
ただひとつ
よもやまさか
これが心というものなのでしょうか
それを残し
その方は一体どこへ向かったのでしょう…
行動は異にして ワタクシは資料を片付けました
腰を掛け この星の模型に目をやり
今起こった事柄を
記憶の中でもう一度 辿っていると
ふと
ワタクシの手や足が
微かに震えていることへと気がつきました
今まで解明できなかった問題の
その答えを求めることができる その可能性と出会えたためでしょうか
はたまたこれこそが
本来ワンダストーン星へと向け続けていた思いの中の
深い慈しみが表出した事象であるからなのでしょうか
ワタクシはどちらも言い当てたものではないと
すぐ解答をけしていました
恐らくこのこと  この感情とは 今後 執拗に起こることがないのです
扉を叩くあの方が 同じようにあらわれることはもう ありません
その哀しみにおいては 少しワタクシも感じ取っていることを表してみたいとも
一瞬 思いまいた 
ワタクシはこの日をさかいに 地球へと向かうまでの間に
幾度学者へ向かない 自分自身と向き合う日々を送ったことでしょうか
身体を生物のように伝い 明瞭にあった思考を 時折 雑に詰まらせる
得体の知れない トモ へと
戸惑う日々が始まったのです
Message From Genius Nyander 
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