往年の従者(おうねんのじゅうじゃ)

 

往年の従者の物語(視点 ローマス)

王宮は騒々しく
普段の静けさを 忘れていた
ワンダストーン星を仕切る 我らが王女に
星の導きがあったということ
こいつは一大事だということだ 
ただ 何も特別な日に起こらなくたっていいじゃねぇか
今日は王女の誕生日だっていうのに…
ワンダストーン星にて
オレサマに与えられた仕事は
従者として王女に仕えることだった
その頃のオレサマは
オレサマをオレサマとは心でも呼ばず
どの従者の誰よりも真剣に仕事をしていたんだ
こいつはマントに誓って嘘じゃねぇぞ
そう オレサマにとって真面目に働くこと
それはこの城においてオレサマの守るべき掟だった
この王宮は居心地がいい
オレサマには 拾われた恩があった
それから何千年の時をこうしてきて
一体どれほどの従者が働き方を覚え
入れ替わり立ち代ってきたのを 見てきたんだろうな
居心地がいいと思い 仕えることになんの疑問も持たず
淡々と仕事をこなしていたそんな頃のこと
星の導きは突然 当たり前のように静寂を奪い去っていった
騒々しい王宮の中でオレサマはその日
 染みついちまったルーティーンをこなし
周りの 噂話で足を止める連中には 目もくれず
普段通り 働いていんだ
唯一つ 今思えば 本当はどこかで望んでたんだろう
働き続けることでは見ることのない 今とは違う生活というものを
この日 王女と面と向かって話したとき
オレサマは 内なる自由への憧れを秘めていた 自分へと 気づいちまったんだ
王女様に星の導きがあった!
星の導きといえば
ワンダストーン星の生物達にとって
最も 忌むべきことの一つにあげられる
死と言う恐ろしい呪いを受けて
どこか遠くの星で再び生まれるという話
人生のやり直しと言えば聞こえはいいが
後戻りがきかないという物騒な噂をよく耳にする
悪く言い換えれば 星による導きとは
つまり 死出の旅へのカウントダウンが
突然 始まっちまうと 言う事
王女様に近づくな 話を聞くな 目を見るな
勝手そこら中に広がる噂
そう 厄介なことに
導きはうつるとされていた
相手の事を多く自分へうつすことで 同じ道を行くことになるらしい
 
よって 誰もが王女に哀しみの意を 表現し
誰もが 悠久の時を生きる方を選び妙に忙しい様子だ
はじまっちまったもんは どうしようもねぇ
それを受けたという王女は今 何を思い過ごしてるんだろうか
どうやら誰も真面目に話かけようとはしなくなっちまったようだ
 
オレサマは他の使用人が騒ぎ オーバーに悲観するのを横目に
今夜開かれるはずの 王女の誕生日パーティーの準備を 続けていた
 
今思えば オレサマは王女に仕え 王女を慕っている方だったらしい
たまに過ぎ去ってくのを 遠くで見てるのがせいいっぱいだったが
この王宮の穏やかで 澄んだ空気というものが
この王女がいなけりゃ 築くことはできなかったことを
そりゃ 何千年も仕えていりゃ 分かるってもんだぜ
慕うってのは 兄弟や 親のような感情だったのかもしれねぇが
オレサマはそういう身分でもないことを十分に理解し 日々を過ごしていた
とまぁ 王女へと色々思うことを 整理し仕事していた
そんなオレサマに
今 話題の当人が 初めて話しかけてきたんだから 驚いた
導きの事なんざなんとも思っちゃいなかったんだが
話しかけられた その時になって噂が聞こえてくるもんだから
なんだか妙な感じだったぜ
影響を受ければ死を受ける
嫌な感情がヒヤリとよぎった
…こんな状況でも あなたは熱心な方のようですね
名はなんと言うのですか?
緊張もあったのかもしれねぇが
不本意に導きが うつるのはたまらねぇなと
そう思いながら出たのは 嘘の名前と
へらっとした愛想笑いだった
私はローマスと申します 王女様
この度はお誕生日 おめでとうございます
こんな悲しい会話があったもんだろうか
こんな風に話せるときというのを 長い間 待ってたはずなんだがよ
どれほど短い時間であったとしても
オレサマにはとてつもなく
長い愛想笑いを続けていたように感じられた
笑いのその裏で
この一瞬よ できれば 早く去ってくれと思っていたんだが
王女は少し真面目な顔をして笑いながら
静かに話を続けたんだ
このような あなたとしての 自由のない仕事
あなたは本当に大切に感じているのでしょうか
えっ
オレサマは即答した
勿論でございます
それは嘘じゃなかった
底から湧き上がる本心だった
オレサマはついつい真面目になっちまうんだ
すると王女は 今度は
意外なことを聞いて来た
ではこの仕事を 愛しておこなっているのですか?
一瞬 頭の中が真っ白になった
次に疑問が湧いてきた
愛だ?一体 愛ってなんなんだ??
答えに困っていると王女は話を続けた
「死は生きる間に
自由を求めるためにあるのですね」
 
〇〇 〇 〇〇
その大切な仕事から
自由になりたいなら
どうかワタシの言葉を忘れないで下さい
〇〇 〇 〇〇
 
言い残すと王女は颯爽と去って行った
その日パーティーは中止となり
オレサマのしていた準備の
全てが台無しになってしまった
なんてことはねぇ
ただ虚しくなっちまったんだ
オレサマの決断は
星中の誰よりも早かったんだと思う
城のあちこちを飛び回り 王女を探しだし
初めて気がついた自分の願いを 言葉にしたんだ
気がついた時にゃ
オレサマは
死をもってでも 自由に生きてみたいと
そう伝えちまってたようだ
すると王女は
真面目だったさっきよりも 柔らかな笑みをして
こう言った
誰よりも真面目な従者 ローマス
ワタシも あなたを必要とします
それを聞いたとき
自分
ひとつの垣根を超えるってのは
きっと こういうときなんだろうなと思ったんだ
その時オレサマは
物凄く 奇妙な感覚になったのさ
なんで王女は 従者であるオレサマへ
そんなことまで
言えちまうんだろうかと
この時オレサマは その垣根が 今しがた聞きかじった
「愛」
というものによって 意外と簡単に
取り外されちまうらしいことを知ったんだ
王女はなお言葉を続けた
旅路を整えるために
忙しくなります
今度お話しをする
その時は 違う星のようです
いいでしょうか ローマス
その時よりかは ワタシを名で 呼んでください と
勿体ねぇ
王女のもとを離れたあとのオレサマは 子供みたいだったぜ
そうだな まずは 時が戻ればいいのに なんて
じっと考えていた
そいつは今じゃずっと前だった
気さえするあの時のこと
そう
王女に話しかけられて 自らの意志もなく
死を受け入れなければと 臆していた
あの瞬間のこと
とっさのこととはいえ 嘘をついちまったオレサマは
王女へ 本当の自分の名を 名乗りそびれちまったんだ
〇〇 〇 〇 〇〇
その頃のオレサマは
オレサマをオレサマとは心でも呼ばず
どの従者の誰よりも真剣に仕事をしていたんだ
こいつはマントに誓って嘘じゃねぇぞ
ことが過ぎ去ればなんだかよ
重力から嫌われちまったみたいに ふわっとしている
もう一度名乗る機会が訪れるんなら
いったいどんな
状況なんだろうかと
たらればの
物語を思い浮かべてみる
まぁ
難しいことは考えないぜ
だが
恐れるってのは逃しちまうんだと
それは本当に
勿体ねぇことなのかも知れねぇな
〇〇 〇 〇 〇〇
Message From Dreamy Romous
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